ここでも書いたアジアのメーカーのひとつ。サムスン。
国内では二流メーカーのレッテルを貼られているものの、
海外での知名度は高く、日本メーカーの存在感のなさとは真逆の大躍進を遂げている。
最近では領土問題でぎくしゃくする韓国との関係から、なぜかやり玉にあげられることが多い。
パクリとかなんとか。まぁ日本を含めアジア全体がパクリ文化圏なのでその辺の野次っぽいのは気にしなくてもいいんじゃないだろうか。
確かに特許を侵害したとのことで、アップルと絶賛バトル中なのは事実だけどなんだかんだでアップルによる戦略的なライバル潰しな印象(実際はわからないけど裁判の話を見た感想ね)。

著者は元韓国サムスン電子常務取締役の経歴を持つ人物。
彼がサムスンという組織のなかで感じたことが一冊にまとめられたのがこちら。
サムスン躍進の裏にある秘密を読みやすい文体で紹介しているので、サムスンを好き嫌い関係なく企業ものとして楽しめる。
読んでておもしろかったのはアジア通貨危機がサムスンを変えたというところ。
韓国経済が打撃を受け、倒産寸前になりつつもどのようにしてそこから這い上がったのか。
本書では状況を打開するためにトップがとった大きな決断と方針転換が紹介されている。
今日に至るサムスンの歴史は通貨危機を乗り越えたとこから始まったといっても過言ではないだろう。

迅速な意思決定、必要な機能だけを備えた製品、先を見通す情報収集力、魅力的なデザインなど、グローバルカンパニーとして求められるものは何かを突き詰めて行った結果生まれたサムスン流とも言える企業文化がサムスンを世界でも有数のメーカーへと育て上げた。
日本を手本としていた過去を捨て去り、独自の成長戦略を描いた結果が今になって現れてきたということだ。
内容の半分以上はそのようなサムスンの物語だが、後半は日本メーカーの再生に必要なものとは何かが語られる。
大体はサムスンのやり方を取り入れること、そこから学ぶことを説くが、それだけでなく、日本独自の良さを武器にした総合的な競争力の重要性を挙げている。
また、これまで培ってきた技術開発、品質管理、生産方式はすぐには真似できるものではなく、そこを活かすことも世界で戦うえでなくてはならないものだと言う。
シャープのニュースが気になるこの頃。
サムスンの例を知ることで見えるものがあるだろう。